ウェブロンザ掲載:深刻化する中東の人権侵害(下) ― 2011/06/01 16:10
今回、シリアにおける人権侵害を非難し調査を求めた国連の人権理事会は、国連が世界の人権問題により効果的に対処できるよう、2006年に創設された比較的新しい機関である。日本政府は、人権理事会において「人権分野における国際貢献をより一層強化していく」とし、創設当初から理事国のひとつである。
すでに2期目に入っているその任期は今年6月で切れる。連続3期をつとめることはできないので、残りの任期はあと1ヶ月しかない。
今年に入ってから、国連の人権理事会は、コートジボワールとリビアにおける人権蹂躙もとりあげ、人権侵害の停止を求めるとともに、調査を行うことを決めた。しかし、同じように、今年に入って深刻な人権侵害が起きているバーレーンやイエメンについては沈黙したままだ。
【中略】
全文はこちらです
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011051300006.html
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、バーレーンですでに28名の犠牲者を確認しており、その大部分が、政府治安機関がデモを強制解散させようとして致死的な武器を使用したことによる死者である。人口がたった120万人に過ぎず、その過半数が外国人労働者であるバーレーンにおける「少なくとも28名死亡」は、極めて深刻な事態と言える。
特に、大規模なデモ鎮圧が行われた3月16日以来、治安機関による暴力弾圧が際立っており、野党指導者や人権活動家、抗議デモ関係者に対する組織的な逮捕・拘束、虐待や脅迫が続き、抗議デモ開始以来、400名以上が拘束された。
また、イエメンでは、サレハ大統領に対する抗議デモが始まった2月以来、政府治安機関などにより殺害されたデモ参加者や通行人は少なくとも109名にのぼることをヒューマン・ライツ・ウォッチは確認している。実際には、犠牲者は109名をはるかに超えると見られる。
国連の人権理事会は、今年に入って起きたリビアやコートジボワールなどの危機をとりあげ、人権危機に対して迅速に意味のある行動をとれると実証した。しかし、理事会が真に信頼される機関になれるかどうかは、恣意的・選択的行動を排し、あらゆる国に対し一貫して公正かつ毅然とした対応をとれるかどうかにかかっている。
設立当初よりの理事国である日本は、残された任期1ヶ月を有意義に使い、日本が人間の生命と尊厳を守る国であると実証して欲しい。昨年以前から続く世界各地の危機はいうまでもないが、バーレーンやイエメンで今年起きている危機も、迅速な対応を必要としている。
St. Gallen Symposium その2: Just Power ― 2011/06/02 10:18
Powerを政治力、軍事力、経済力、発言力、リーダーシップ、価値観など様々な観点から切り、「Just Power」とは何なのか、を議論しました。中東での民主化運動で顕著になったように、ソーシャルメディア他の情報通信技術の発達や、新興国の成長により、世界のパワーバランスがどんどんシフトしていると思います。北から南へ。国から町へ。政府から市民へ。情報が溢れ、誰でも「パワー」を行使しやすくなった今日の世界における
正義とは、そして周りを惹きつけるリーダーに求められるものは何なのでしょうか。
シンポのディスカッションを聞きながら驚いたのが、アメリカ陸軍士官学校の大佐、BPのGroup Chief Executive、フランスのラガルド経済・財政・雇用相など、いかにも「力」を沢山もっていそうなリーダーたちが口を揃えて、これからのリーダに必要なのはTrust(信頼)、Compassion(思いやり)、自分の心の中のvirtue(美徳)、そして周りへのサービスだと言っていたことです。これらの要素を日々積み上げることで、Just powerを持ったリーダーとなるのだということを学びました。
前回のブログでもご紹介した通り、今回のシンポには200人のLeaders of Tomorrowが参加していたのですが、20代の彼ら・彼女らたちが世界各地ですでにJust Powerを発揮し、ビジネスを立ち上げたり、社会的行動を起こしているのにはとても刺激を受けました。例えば、中南米で何百人ものティーンエイジャーが社会起業家として事業を立ち上げるのをサポートしてきたアルゼンチンの大学院生。20代にしてインドネシア国内で700店舗の飲食店を展開している事業家。このような方たちと出会えたことは、一生の宝物です。
みなさんにとってのJust Powerとは何でしょうか。
次回は、世界遺産に登録されているザンクトガレン修道院もある、St. Gallenの街の様子と、800人にものぼるシンポジウム参加者を温かく迎え入れてくれたSt. Gallen Universityの学生たちについてなどご報告しますのでお楽しみに!!
朝日ネットの皆様に感謝! ― 2011/06/03 17:54
このアサブロをやっていらっしゃる朝日ネットさんの「キックオフミーティング2011」におじゃまさせていただきました。
さて、今年のゴールを全社員で共有するキックオフミーティングに出席してみて、社員さんたちが目標を目指してがんばりつつも、和気藹々と仲間をサポートしながら仕事されている様子がよくわかりました。
ちなみに、上の写真、キックオフで表彰されたニューヨーク支社のスタッフを囲んだ写真なんです。忍者や侍、姫という日本的な仮装をされているのがニューヨーク支社で活躍中のスタッフさんです。
朝日ネットは、最近、ニューヨークに支店を出し、MITやハーバードを含め世界中に、クラウド型教育支援システムManabaを広げているんですね。短期間にどんどん広がったその立役者が、こちらの(仮装中の)若い社員さんたち。
グローバル最前線で日本のプログラムを世界にセールスするその熱気に、私も「グローバルにがんばる!」という思いを強くしたのでした。
【予告】ニュースの深層:天安門事件から22年 映画「亡命」の監督に聞く中国の民主化(仮題) ― 2011/06/04 16:17
St. Gallen Symposium その3: 世界遺産の街の学生パワー ― 2011/06/06 16:29
このブログでも第一回、第二回とお伝えしてきましたSt. Gallen Symposium。今日は、このシンポの裏で頑張っている沢山の学生たち、そして開催地であるスイスのSt. Gallenの街についてお伝えしたいと思います。
今年で41回目のSt. Gallen Symposiumですが、すべて学生の手でつくりあげられているんです!International Students' Committee(ISC)という、University of St. Gallenの約30名の学部生たちが、会議のテーマ決定やスピーカー選びから、参加者の飛行機の予約そして会場での交通整理まで、何から何まで準備してくれます。一番驚いたのは、ISCのメンバーはこのシンポの準備のために1年間休学しているということです!これほど沢山の時間と努力、そして愛がこもったシンポだと知って感動してしまいました。ISCのメンバーひとりひとりに、心からの御礼を伝えたいです。こちらが今年のISCメンバーの集合写真。みんな笑顔が素敵ですね!
中心となっているのはこのISCの学生たちなのですが、その後ろでは数百人のUniversity of St. Gallenの学生がボランティアで会議の運営に参加しています。会議中の食事を運んでくれるのも、200名のLeaders of Tomorrowを自分の家に泊めてくれるのも学生たちです。わたしも、ドイツ出身の大学2年生Piaさんのお家に泊めてもらいました。これがPiaさんのアパート。友達4人で一緒に暮らしているそうです。
St. Gallenの街には世界遺産があるのをご存知でしたか?
街の中心にあるザンクト・ガレン修道院は、スイスで一番早く、1983年に世界遺産に指定されました。アイルランドの修道士ガルス(St.Gallus)が、613年にこの地に建てた僧院が母体となっています。
シンポ中は街を観光する時間がなかったので、St. Gallenを出発する朝に早起きして修道院に行ってきました。周りには誰もいなく、世界遺産を独り占め。。。こんな贅沢ありません!その時に撮った写真がこちら。まだ薄暗い空にもなんだかぴったりです。
今後もひとりでも多く、日本からSt. Gallen Symposiumに参加してほしいと心から願っています。来年のシンポは2012年5月3日、4日に開催予定です。詳細が決まり次第HPで発表になるので、ぜひ応募してみてください。綺麗なSt. Gallenの街並みで、学生や街の人たちが温かいホスピタリティーで迎えてくれます!
「アフリカ開発と人権シンポジウム」のご案内 ― 2011/06/07 12:20
こんにちは、インターンの湯村です。延期になっておりました明治大学での 「アフリカ開発と人権シンポジウム」の詳細が決定いたしましたので、ご連絡 いたします。
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アフリカ開発と人権シンポジウム
アフリカの将来を問う:開発と人権確立をいかに両立させるか?
――エチオピアにおける開発と人権の矛盾を例に――
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【概要】
日時:2011年7月4日(月)18時半―21時
場所:明治大学 駿河台キャンパス リバティタワー 9階1093教室
(JR・地下鉄「御茶ノ水駅」と地下鉄「新御茶ノ水駅」から徒歩2分、地下鉄 「神保町駅」「小川町」駅から徒歩5分)
地図:http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
主催:ヒューマン・ライツ・ウォッチ、特定非営利活動法人アフリカ日本協議 会
参加費:1000円 (学生以下 無料)日本語通訳付き
参加方法:tokyo[アット]hrw.org 宛に、ご氏名とご所属をメールしていただけま すと幸いです。事前申込みなしに直接御来場いただいても問題ありません)
お問い合わせ: ヒューマン・ライツ・ウォッチ(担当 吉岡)
03-5282-5160 / tokyo[アット]hrw.org
【プログラム】
第一部:講演(18時半―19時半)
「エチオピアの政治・経済の概要」
林達雄(特定非営利活動法人アフリカ日本協議会 代表理事)
「エチオピアの市民社会のおかれた現状」
ヨセフ・ムルゲタ弁護士(エチオピア人権評議会 元事務局長)
※「エチオピア人権評議会」はエチオピアの著名な人権NGO
第二部:パネルディスカッション「開発と人権:抑圧的政権とどう向き 合うべきか?」(19時半―21時)
問題提起
ベン・ロレンス(ヒューマン・ライツ・ウォッチ アフリカ調査員、エチ オピアにおける国際人道援助の政治利用を告発した「自由なき開発」 の著者)
ディスカッサント
熊岡路矢 (日本映画大学教授、東京大学大学院客員教授)
ヨセフ・ムルゲタ弁護士(エチオピア人権評議会 元事務局長)
石田洋子(一般財団法人国際開発センター 理事(評価・調査担当))
※※※ 本シンポジウムの趣旨 ※※※
「アフリカの優等生」とも言われるエチオピアでは、国家主導でミレニアム開発目標(MDGs)の達成を積極的に進め、基礎教育や保健などについては大きな進展を見ています。しかし、一方で、開発における与党支持者の優遇、NGOの活動の制限、言論の自由の抑圧、ソマリア南部への進駐やソマリ地方における残虐な反体制派弾圧など、人権や外交政策において残虐な一面を持ち、国際社会からも批判を受けています。
アフリカ大陸の経済成長が注目されつつあります。また、MDGsの達成や基礎教育・保健の重要性は論を待ちません。一方、国家の開発と、言論や政治活動の自由、民主主義の保障をどう両立させていくかが問われています。エチオピアは、その最前線です。
【予告】ニュースの深層:児童労働は無くせるのか(仮題) ― 2011/06/08 11:48
今回のテーマは、児童労働。世界には現在、2億1500万人もの児童労働者たちがいます。日本の人口は1億7000万人、、、どれだけ多いのかが分かります。それでも、「児童労働は無くせる」と岩附さんは言います。
ACEは、「世界の子どもを児童労働から守るNGO」です。児童労働に関して、日本の最先端で活躍されている岩附さんにお話しを伺います。
児童労働とは何か。
子どもたちは具体的にどのような状況にあるのか。
なぜ児童労働が生まれてしまうのか。
ACEはどのような活動をしているのか。
私たちには何ができるのか。
などなど、55分間の生放送で、たっぷりと議論をお届けします。
6月15日(水)朝日ニュースター夜8:00~8:55
どうぞご覧ください!!
ニュースの深層:「天安門事件から22年 帰れない祖国」 ― 2011/06/09 14:42
こんにちは、インターンの湯村です。香苗さんがキャスターを務めている「ニュースの深層」水曜日。6月8日の撮影に同行してきました!
今回のゲストは、映画「亡命」の翰光監督でした。「亡命」は、中国からの亡命を強いられ、世界各国にいる知識人、作家、芸術家、詩人、政治活動家たちへインタビューをした長編ドキュメンタリーです。
6月4日は天安門事件22周年でした。この事件は、中国の民主化運動の象徴ともいえるものです。しかし、この時代以前から、中国政府を批判したり言論の自由を求めたりし、祖国にいられなくなった人々=「亡命者」がいたのだと翰監督は言います。百花斉放百家争鳴の後が亡命者の第一世代、文化大革命が第二世代、そして天安門事件が第三世代なのだそうです。
また、中国国内にも、劉暁波さんや劉霞さんをはじめ、言論の自由を奪われ言葉を発することが出来ない人たちが沢山います。このような人々は国内の亡命者とも言えるかもしれません。
このような状況下でも、中国に変化はみられ、民主化はそう遠くないと翰監督は言います。全ての人々の権利が守られた上での連帯がある国、そのような国を亡命者たちは求めており、このような考えが啓蒙として伝わっていくことを望んでいるのです。
祖国を思い、世界各地で活動している人々へのインタビューがまとめられた、貴重な作品である「亡命者」。みなさまも、是非ご覧ください。映画や上映の詳細はこちら。
「ニュースの深層」の再放送の日程はこちら。
【ご案内】公開セミナー@宇都宮大学 ― 2011/06/10 12:43
みなさま、どうぞご参加下さい!
2011年7月5日(火)12 :50 ~ 14:20
公開セミナー「アフリカの将来を問うー開発と人権確立をいかに両立させるか?」-エチオピアにおける開発と人権の矛盾を例にー(宇都宮大学)
◆内容:エチオピア政府は海外からの開発援助を野党支持者抑圧の道具として悪用し,政府批判を封じ込めています。それにもかかわらず、援助国や開発機関はそうしたエチオピア政府のやり方に、更なる開発援助増額で応えてしまっています。この開発援助には,日本の政府開発援助(ODA),すなわち我々一般市民の税金も含まれています。
1985 年、故マイケル・ジャクソンなどが集まって歌った“We are the world”は,エチオピアの飢餓難民救済の活動でありましたが,それ以降もエチオピアは不安定な政情が続いています。現メレス政権のエチオピアで何が起きているのか,そして我々は何ができるのか,考えてみましょう。
エチオピアにおける援助の悪用に関して,下記をご参照ください。http://www.hrw.org/ja/news/2010/10/19
※講義は英語で行われます。
◆日時:平成23年7月5日(火)12 :50 ~ 14:20
◆講師:ヨセフ・ムルゲタ氏(人権弁護士) / ベン・ロレンス氏(HRW・アフリカ担当)
◆会場:宇都宮大学 国際学部 大会議室(A棟4階)
◆参加:参加費無料
◆問合せ:宇都宮大学国際学部 yonekawa@cc.utsunomiya-u.ac.jp TEL:028-649-5180
※ヒューマンライツウォッチは、国際キャリア実習Ⅰ(国内インターン)の受入れ先です。
【訂正】「アフリカ開発と人権シンポジウム」のご案内 ― 2011/06/13 11:46
こんにちは、インターンの湯村です。以前にご案内した明治大学での「アフリカ開発と人権シンポジウム」に一部変更がございますので、訂正いたします。
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アフリカ開発と人権シンポジウム
アフリカの将来を問う:開発と人権確立をいかに両立させるか?
――エチオピアにおける開発と人権の矛盾を例に――
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【概要】
日時:2011年7月4日(月)18時半―21時
場所:明治大学 駿河台キャンパス リバティタワー 9階1093教室
(JR・地下鉄「御茶ノ水駅」と地下鉄「新御茶ノ水駅」から徒歩2分、地下鉄「神保町駅」「小川町」駅から徒歩5分)
地図:http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
主催:ヒューマン・ライツ・ウォッチ、特定非営利活動法人アフリカ日本協議会
参加費:1000円 (学生以下 無料)無料、日本語通訳付き
参加方法:tokyo[アット]hrw.org 宛に、ご氏名とご所属をメールしていただけますと幸いです。事前申込みなしに直接御来場いただいても問題ありません)
お問い合わせ: ヒューマン・ライツ・ウォッチ(担当 吉岡)03-5282-5160 / tokyo[アット]hrw.org
【プログラム】 「エチオピアの市民社会のおかれた現状」
第一部:講演(18時半―19時半) 「エチオピアの政治・経済の概要」 林達雄(特定非営利活動法人アフリカ日本協議会 代表理事) 「エチオピア概要:開発と人権の交差点」
稲場雅紀(特定非営利活動法人アフリカ日本協議会 国際保健部門ディレクター)
ヨセフ・ムルゲタ弁護士(エチオピア人権評議会 元事務局長)
※「エチオピア人権評議会」はエチオピアの著名な人権NGO
第二部:パネルディスカッション「開発と人権:抑圧的政権とどう向き合うべきか?」(19時半―21時)
問題提起
ベン・ロレンス(ヒューマン・ライツ・ウォッチ アフリカ調査員、エチオピアにおける国
際人道援助の政治利用を告発した「自由なき開発」の著者)
ディスカッサント
熊岡路矢 (日本映画大学教授、東京大学大学院客員教授)
ヨセフ・ムルゲタ弁護士(エチオピア人権評議会 元事務局長)
石田洋子(一般財団法人国際開発センター 理事(評価・調査担当))
※※※ 本シンポジウムの趣旨 ※※※
「アフリカの優等生」とも言われるエチオピアでは、国家主導でミレニアム開発目標(MDGs)の達成を積極的に進め、基礎教育や保健などについては大きな進展を見ています。しかし、一方で、開発における与党支持者の優遇、NGOの活動の制限、言論の自由の抑圧、ソマリア南部への進駐やソマリ地方における残虐な反体制派弾圧など、人権や外交政策において残虐な一面を持ち、国際社会からも批判を受けています。
アフリカ大陸の経済成長が注目されつつあります。また、MDGsの達成や基礎教育・保健の重要性は論を待ちません。一方、国家の開発と、言論や政治活動の自由、民主主義の保障をどう両立させていくかが問われています。エチオピアは、その最前線です。
本シンポジウムは、エチオピアを例に、開発と人権をどう両立させていくか、日本政府や日本のNGOが、アフリカにおける、政府による人権抑圧や言論弾圧にどう向き合っていくべきかについて検討します。