ウェブロンザ掲載:深刻化する中東の人権侵害(下)2011/06/01 16:10

(2011/05/14) 土井香苗著

 今回、シリアにおける人権侵害を非難し調査を求めた国連の人権理事会は、国連が世界の人権問題により効果的に対処できるよう、2006年に創設された比較的新しい機関である。日本政府は、人権理事会において「人権分野における国際貢献をより一層強化していく」とし、創設当初から理事国のひとつである。

 すでに2期目に入っているその任期は今年6月で切れる。連続3期をつとめることはできないので、残りの任期はあと1ヶ月しかない。

 今年に入ってから、国連の人権理事会は、コートジボワールとリビアにおける人権蹂躙もとりあげ、人権侵害の停止を求めるとともに、調査を行うことを決めた。しかし、同じように、今年に入って深刻な人権侵害が起きているバーレーンやイエメンについては沈黙したままだ。

【中略】
全文はこちらです
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011051300006.html

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、バーレーンですでに28名の犠牲者を確認しており、その大部分が、政府治安機関がデモを強制解散させようとして致死的な武器を使用したことによる死者である。人口がたった120万人に過ぎず、その過半数が外国人労働者であるバーレーンにおける「少なくとも28名死亡」は、極めて深刻な事態と言える。

 特に、大規模なデモ鎮圧が行われた3月16日以来、治安機関による暴力弾圧が際立っており、野党指導者や人権活動家、抗議デモ関係者に対する組織的な逮捕・拘束、虐待や脅迫が続き、抗議デモ開始以来、400名以上が拘束された。

 また、イエメンでは、サレハ大統領に対する抗議デモが始まった2月以来、政府治安機関などにより殺害されたデモ参加者や通行人は少なくとも109名にのぼることをヒューマン・ライツ・ウォッチは確認している。実際には、犠牲者は109名をはるかに超えると見られる。

 国連の人権理事会は、今年に入って起きたリビアやコートジボワールなどの危機をとりあげ、人権危機に対して迅速に意味のある行動をとれると実証した。しかし、理事会が真に信頼される機関になれるかどうかは、恣意的・選択的行動を排し、あらゆる国に対し一貫して公正かつ毅然とした対応をとれるかどうかにかかっている。

 設立当初よりの理事国である日本は、残された任期1ヶ月を有意義に使い、日本が人間の生命と尊厳を守る国であると実証して欲しい。昨年以前から続く世界各地の危機はいうまでもないが、バーレーンやイエメンで今年起きている危機も、迅速な対応を必要としている。

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