児童福祉法等の一部を改正する法律の公布 について(通知) ― 2016/10/31 16:48
児童福祉法等の一部を改正する法律の公布について(通知)
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長
平成 28 年6月3日
「児童福祉法等の一部を改正する法律」(平成 28 年法律第 63 号。以下「改正法」 という。)については、本年5月 27 日に法案が成立し、本日公布されたところである。改正法の趣旨及び概要は下記のとおりであり、十分御了知の上、管内市町村(特
別区を含む。以下同じ。)をはじめ、関係者、関係団体等に対し、その周知徹底を
お願いする。
改正法の一部が公布日に施行されることに伴い、「児童福祉法施行令及び地方自
治法施行令の一部を改正する政令」(平成 28 年政令第 234 号)及び「児童福祉法施
行規則の一部を改正する省令」(平成 28 年厚生労働省令第 106 号)が本日公布され、
政省令について形式的な規定の整備を行っている。平成 28 年 10 月1日及び平成 29 年4月1日施行の改正事項については、必要な政省令及び通知等を今後制定し、そ
の具体的な内容について別途通知する予定である。
なお、本通知は、地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 245 条の4第1項の規 定に基づく技術的助言である。
記
第1 改正の趣旨
全ての児童が健全に育成されるよう、児童虐待について発生予防から自立支援 までの一連の対策の更なる強化等を図るため、児童福祉法の理念を明確化すると
ともに、子育て世代包括支援センターの法定化、市町村及び児童相談所の体制の
強化、里親委託の推進等の措置を講ずる。
第2 改正の概要
Ⅰ 児童福祉法の理念の明確化等
1 児童の福祉を保障するための原理の明確化(公布日施行)
⑴ 改正の趣旨
児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号)の理念規定は、昭和 22 年の制定時 から見直されておらず、児童が権利の主体であること、児童の最善の利益が
優先されること等が明確でないといった課題が指摘されている。
このため、児童福祉法において、児童は、適切な養育を受け、健やかな成
長・発達や自立が図られること等を保障される権利を有することを、総則の
冒頭(第1条)に位置付け、その上で、国民、保護者、国・地方公共団体が、
それぞれこれを支える形で、児童の福祉が保障される旨を明確化することと
する。
⑵ 改正の概要
以下の内容を児童福祉法第1条及び第2条に規定する。なお、これらは、 「児童の福祉を保障するための原理」であり、児童に関する全ての法令の
施行に当たって、常に尊重されなければならない(児童福祉法第3条)。
① 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育
されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、そ
の心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の
福祉を等しく保障される権利を有する(同法第1条)。
② 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重
され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努める(同法第2条第1項)。
③ 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第
一義的責任を負う(同法第2条第2項)。
④ 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健
やかに育成する責任を負う(同法第2条第3項)。
2 家庭と同様の環境における養育の推進(公布日施行)
⑴ 改正の趣旨
家庭は、児童の成長・発達にとって最も自然な環境であり、児童が家庭に
おいて心身ともに健やかに養育されるよう、その保護者を支援することが重要であることから、その旨を法律に明記する。
一方、保護者により虐待が行われているなど、家庭で適切な養育を受けられない場合に、現状では児童養護施設等の施設における養育が中心となって
いるが、家庭に近い環境での養育を推進するため、養子縁組や里親・ファミ
リーホームへの委託を一層進めることが重要である。このため、こうした場
合には、家庭における養育環境と同様の養育環境において、継続的に養育されることが原則である旨を法律に明記する。
ただし、専門的なケアを要するなど、里親等への委託が適当でない場合(※ 1)には、施設において養育することとなるが、その場合においても、でき る限り小規模で家庭に近い環境(小規模グループケアやグループホーム等)において養育されるよう必要な措置を講じなければならない旨を法律に明
記する。
これらの規定に基づき、養子縁組や里親・ファミリーホームへの委託を積
極的に推進することが重要(※2)である。特に就学前の乳幼児期は、愛着
関係の基礎を作る時期であり、児童が安心できる、温かく安定した家庭で養
育されることが重要であることから、養子縁組や里親・ファミリーホームへ
の委託を原則とすることとする。
※1 里親等への委託が適当でない場合について、具体的にどのようなケー
スがあり得るか、今後、「里親委託ガイドライン」(平成 23 年3月 30 日付 け雇用均等・児童家庭局長通知)の改正等によりお示しする予定である。
※2 養子縁組を積極的に推進することとしたこと等を踏まえ、今後、「児童
養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について」(平成 24 年 11 月 30 日付け雇用均等・児童家庭局長通知)により作成を依頼した「都道府県
推進計画」の目標のあり方について検討する予定である。
⑵ 改正の概要
以下の内容を児童福祉法第3条の2に規定する。
① 国及び地方公共団体は、児童が「家庭」において心身ともに健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援することとする。(児童福祉法第3条の
2)
② ただし、児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない
場合は、児童が「家庭における養育環境と同様の養育環境」において継続
的に養育されるよう、また、児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合は、児童ができる限り「良好な家庭的環境」にお
いて養育されるよう、必要な措置を講ずることとする。(同法第3条の2)
なお、「家庭」とは、実父母や親族等を養育者とする環境を、「家庭における養育環境と同様の養育環境」とは、養子縁組による家庭、里親家庭、
ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)を、「良好な家庭的環境」
とは、施設のうち小規模で家庭に近い環境(小規模グループケアやグルー
プホーム等)を指す。
3 市町村・都道府県・国の役割と責務の明確化(公布日施行)
⑴ 改正の趣旨
児童の福祉を保障するためには、その担い手となる市町村、都道府県、国 それぞれが、自らの役割・責務を十分に認識し、円滑かつ効果的にその事務
を遂行する必要があるが、現行の児童福祉法では、その役割・責務は、様々
な規定に分散し、必ずしも明確でない。このため、改正法では、市町村、都
道府県、国それぞれの役割・責務について、児童福祉法の総則に規定し、明
確化することとする。
⑵ 改正の概要
以下の内容を児童福祉法第3条の3に規定する。
① 市町村は、基礎的な地方公共団体として、児童の身近な場所における児 童の福祉に関する支援等に係る業務を適切に行うこととする(児童福祉法
第3条の3第1項)。例えば、施設入所等の措置を採るに至らなかった児童
への在宅支援を中心となって行うなど、身近な場所で児童や保護者を継続
的に支援し、児童虐待の発生予防等を図る。
② 都道府県は、市町村に対する必要な助言及び適切な援助を行うとともに、 専門的な知識及び技術(以下「知識等」という。)並びに各市町村の区域
を超えた広域的な対応が必要な業務として、児童の福祉に関する業務を適
切に行うこととする(同法第3条の3第2項)。例えば、一時保護や施設
入所等、行政処分としての措置等を行う。
③ 国は、市町村及び都道府県の行う業務が適正かつ円滑に行われるよう、 児童が適切に養育される体制の確保に関する施策、市町村及び都道府県に
対する助言及び情報提供等の必要な各般の措置を講ずることとする(同法
第3条の3第3項)。例えば、市町村及び都道府県における体制等につい
て、あるべき水準を明確にし、これを達成するための方策を具体化するな
どにより、児童の福祉に関する支援の質の均てん化を図る。
4 国による要保護児童に係る調査研究の推進(公布日施行)
⑴ 改正の趣旨
児童虐待防止対策等を一層促進する観点から、国において、要保護児童の
事例の分析や必要な統計整備等、要保護児童の健全な育成に資する調査研究
を推進することとする。
⑵ 改正の概要
国は、要保護児童の健全な育成に資する調査研究を推進することとする (児童福祉法第 33 条の9の2)。
5 しつけを名目とした児童虐待の禁止(公布日施行)
⑴ 改正の趣旨
依然として後を絶たない「しつけを名目とした児童虐待」を抑止する観点 から、法律上「親権を行う者は、児童のしつけに際して、監護及び教育に必
要な範囲を超えて当該児童を懲戒してはならない」旨を明記することとする。
⑵ 改正の概要
児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、監護及び教育に必要な範 囲を超えて当該児童を懲戒してはならないことを法律上明記する。(児童虐待
の防止等に関する法律(以下「虐待防止法」という。)第 14 条)
http://www.hoyokyo.or.jp/nursing_hyk/reference/28-1s3-2.pdf