ノーベル平和賞に中国の作家で人権活動家・劉暁波氏2010/10/20 20:34

ノルウェーのノーベル賞委員会は8日、2010年のノーベル平和賞を、「中国における人権のため、長年にわたり非暴力的闘争を行っている功績」があったとして、中国で服役中の民主活動家・劉暁波氏(54)に授与すると発表しました


20091225日、北京の裁判所は、劉氏に懲役11年の実刑判決を宣告しました。劉氏には、中国における法の支配と人権尊重を求める「08憲章」を起草するとともに、これを広めたとして「国家転覆煽動罪」の容疑がかけられました。08憲章は、人権、民主主義、そして法の支配を、中国の政治体制の核心にすべきと提言したインターネット上の申立です。当初、人権活動家や法律活動家を含む303名の中国人が08憲章に署名。その後も、インターネットを通じて広まり、現在は何千名もが署名をしています。劉氏は、2009623日に正式に拘束されましたが、それ以前の2008128日から、拘束・隔離され続けています。

 この賞は中国の人権状況を再度国際的な議論の俎上に戻すことになります。そして、中国政府を激怒させることは間違いありません。しかし、それ以上に中国政府がいやなのは、多くの中国国民が劉暁波氏について検索し、08憲章を読むことなのです。このノーベル賞は、劉氏の人権と民主主義に向けた断固たる活動を称賛するだけでなく、中国政府が国民にアカウンタビリティある政府となるよう日々闘うすべての中国人たちをも称賛する賞といえるでしょう。


劉氏の逮捕は政治的動機に基づくものであるとともに、拘禁の条件は公正と適正手続についての最低基準を満たしませんでした。大学で文学を教えていた劉氏は、19896月天安門事件の後拘束され、約2年間を刑務所で過ごしました。その後、200812月、中国法により保障されている最低限の手続きにも違反し、同氏は拘禁されました。これを受けて、ノーベル賞受賞者たちを含む著名な有識者たちが、中国の胡錦濤国家主席に対し、劉氏の解放を求める公開書簡を送ったのです。これには、日本人知識人も署名しています。


劉氏の投獄は、2008年の北京五輪前から中国政府が強化している政治弾圧の一環といえます。以来、中国政府は、根拠のない国家機密関連罪や国家転覆関連罪で、著名な反体制派たちを長期間にわたり投獄しています。それ以外にも、メディアやインターネットの制約を拡大したり、弁護士や人権活動家、NGOへの統制も強化しています。2007年初頭以来、中国政府は、ウイグル民族やチベット民族に対しても統制を強化しました。恣意的拘禁や強制失踪は、新疆やチベット双方で増加。そして、「闇監獄」として知られている秘密拘禁施設での違法な市民の拘禁も引き続き行なわれています。


中国がこれだけ大国となった今、多くの国の政府が、中国の暗部に声をあげることに及び腰になっています。ノーベル賞選考委員会は、中国について世界中の多くの人が目をつぶっている現実に光を当てたのです。中国政府が隠したい現実―――人権活動家、弁護士、ジャーナリストなどを迫害し続けている現実です。劉暁波氏は、普遍的価値を非暴力の手段により表現するとともに権力に真実をもって対峙するという彼の信念から逸脱したことはありません。ノーベル平和賞の理念を具現化しているといっていいでしょう。


劉暁波氏は即刻釈放されるべきです。それとともに、胡佳(Hu Jia)氏、高智晟(Gao Zhisheng)氏、譚作人(Tan Zuoren)氏、黄気(Huang Qi)氏など、他にも拘束中あるいは「失踪」させられている活動家も釈放されるべきです。劉氏は、最も有名な獄中知識人ですが、その他にも、中国政府を批判したため、劉氏と同じような苦しみ----あるいはより厳しい苦しみ----の中にある中国の人びとは数多いことを忘れることはできません。


 中国政府は、劉暁波氏を政府の敵とするのはもうやめるべきです。ノーベル賞選考委員会と同様、中国の至高の行動と知識を体現する人物であると認めるべきなのです。



 


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