セネガル -- 放課後活動 は路上の 物乞い(その1)2010/05/21 17:34

タイトルを見て、「ああ、アフリカの貧しい子供たちの話だな」と思った方も多いかもしれません。今回から3回に分けてご紹介するフォト・ストーリーは、アフリカ大陸の西にある、セネガルの少年たちの日常です。

フランスの植民地だったセネガルは、現在は大多数がイスラム教徒の国です。ほとんどが12歳以下の少年たちが何万人も、寄宿型のコーラン学校(ダーラ)で生活をしています。

両親は、子供たちが日々イスラムの教えを学んでいると思っている(またはそう考えるようにしている)一方で、少年たちはコーラン学校の教官(マラブー)に路上で物乞いを強制され、日々虐待されている--それが今回ご紹介するお話です。タイトルから思い浮かぶであろう、発展途上国のストリートチルドレンのお話とは、実はちょっと違います

Senegal1
                                                                             (c) 2008 Thomas Lekfeldt
これは、セネガルの首都ダカール(パリ-ダカール・ラリーのダカールです)でタクシーの運転手にお金を乞う3人の少年たち。トマトの缶をそれぞれが持って、お金や米、砂糖を集めて、コーラン学校の教官に持ち帰るのです。ノルマを果たせないと、待っているのは殴る蹴るの虐待…。

その実態は、4月15日にヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した報告書「子供たちの搾取をやめよ:セネガルにおける強制物乞いと虐待の実態」(全114ページ、英語)に詳しいので、ぜひお読みください。

Senegal2
                                                                             (c) 2008 Thomas Lekfeldt
物乞いに向かう途中の少年グループ。彼らは平均して、一日7時間も路上で物乞いをさせられています。タイトルは「放課後」となっていますが、本当は放課後活動どころか、フルタイム活動なのです。HRWの報告書によると、ほとんどの人が一日2ドル以下で生活しているセネガルで、子供を搾取しているコーラン学校の教官たちは、一年になんと2万ドルから6万ドルを荒稼ぎするといいます。中には奴隷のように少年たちをこき使った結果、一年で10万ドルを稼ぐ教官もいると聞けば、出る言葉もありません。

Senegal3
                                                                             (c) 2008 Thomas Lekfeldt
交通の激しい路上や交差点が、少年たちの校庭です。人や車の多い場所に行けば行くほど、ノルマ達成の確立は高まるからです。常に交通事故やその他の危険と隣り合わせの課外活動--こんなことが許されていいはずはないのですが、政府もこの現状に全く見て見ぬふりです。少年の足元を見てください…裸足です。HRWが聞き取り調査をした少年のうち、40%以上は一足のくつも持っていませんでした。

Senegal4
                                                                                (c) 2010 Ricci Shryock
ダカールにあるモスクの外で、施しのチャンスをうかがうたくさんの少年たち。HRWの報告書内で証言をしている11歳の少年(7歳のときに両親にダカールのコーラン学校に送られた)に課された一日のノルマは、600CFA(約1ドル30セント)と米、砂糖。
「言われたとおりに持ち帰れなかった日は、電気コードで教官に背中や首を打たれた。数え切れないくらいぶたれる間、いつも一度も僕に手をあげたことのない家族のことを考え続けたんだ。家にいたころのことを思い出そうと必死で」

「宗教と道徳の教育」を隠れみのにした、セネガルの少年たちに対する残酷な搾取。奴隷のように扱われ、路上を日々さまよう彼らの姿を、次回も引き続きご紹介していきたいと思います。

「アフリカのキムジョンイル」ともいわれる独裁者をたたえる人権賞!?2010/05/21 17:51

 

こういう賞があるのか知りませんが、あれば納得できます。

 

でも、「金正日(キムジョンイル)人権賞」、「ジョージブッシュ人権賞」、などがあったらブラックユーモアのようですよね。しかも、その賞を大真面目に国連が授与しようとしているのだったら、どうしますか?しかも、その事務局のトップが、日本人の外交官だったとなったら・・・

 

実は、これ、ウソのような本当の話で、賞の授与は来月予定されているのです。

 

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が、人権侵害と腐敗にまみれた西アフリカの独裁者 西アフリカは赤道ギニアの「オビアン大統領」を讃えた賞を授与しようとしています。

 

人権、教育、そして基本的自由の促進を謳うユネスコ憲章との整合性はどうなるんでしょうか・・・?

 

その名も、「人類の生活の質を向上させる科学的功績」を表彰するユネスコの「オビアン賞」。

 

でも、彼は、1979年の武力クーデターで権力の座につき、以来、権力の座につき続けている人物。

 

サハラ以南で第四の産油量を誇る赤道ギニアは、一人当たりの国内総生産(GDP)は韓国と並び、日本に迫る勢いの国です。どれだけ国民は豊かかというと・・・実は、水道さえない貧困ライン以下の生活を送る国民が、全人口50万人の75%以上。冨は、オビアン大統領に近いごく一部の人たちが独占しているわけです。

 

オビアン大統領は、有り余るほどの冨を手にしながら、国民の「生活の質を向上」は全く無視です。

 

彼は貧困の元凶であるだけではなりません。人権も侵害しています。

 

警察による野党勢力の弾圧や恣意的拘禁や拷問が横行している、と国連の人権専門家たち。表現の自由の弾圧や、経済的権利や社会的権利の無視も批判の的です。

 

しかも、オビアン大統領は、汚職でも悪名高い人物です。このユネスコ賞のための3億円もオビアン大統領が出したのですが、この3億円は、オビアン大統領の名誉のためではなくて、赤道ギニア国民の食料や水や医療のために使われるべきではないでしょうか?ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体は、この3億円の資金源を調査するように求めていましたが、結局いままで調査はされないまま。

 

国際人権団体や赤道ギニアの人権活動家たちが激しく抗議していますが、ユネスコは、初のオビアン賞を6月末に授与すると発表しています。ちなみに、この賞を取り消す権限を持っているのは、ユネスコの執行理事会。日本政府は、その副議長です。ヒューマンライツウォッチは、ユネスコはもちろん、日本政府にも要請をしてきましたが、日本政府からは回答はありません。

 

また、ユネスコ執行委員会で「オビアン賞」の設立が決まった08年当時のユネスコの事務局長は日本の外交官の松浦晃一郎氏でした。

 

赤道ギニアで水もない、教育も受けられない、自由にものもいえない、政治犯として投獄されている・・・と苦しむ赤道ギニアの人びとの顔にどろを塗るような賞を、国連は早く取りやめるべきではないでしょうか。

 

ユネスコの名誉をまもるため、日本の名誉を守るためにも、「オビアン賞」の撤回が急務です。

 

赤道ギニアでの石油と人権侵害の詳細については、こちらhttp://www.hrw.org/en/reports/2009/07/09/well-oiled-0)の報告書(英語)をご覧ください。

 

 

 

湯川秀樹物理学賞、アウンサンスーチー人権賞。