ウェブロンザ掲載:スリランカ内戦の戦争責任――日本政府は声をあげよ ― 2011/05/27 16:00
ちょうど2年前の5月、26年間に及ぶスリランカ内戦は終結した。政府軍が、分離独立派武装組織「タミル・イーラム解放の虎」(LTTE)を殲滅したのだ。その内戦最後の数ヶ月間に、スリランカ北東部の美しい海辺で殺害された民間人は万に及ぶとみられる。
この「大殺戮」(http://www.ft.com/intl/cms/s/f26db3f6-3e22-11de-9a6c-00144feabdc0,Authorised=false.html?_i_location=http%3A%2F%2Fwww.ft.com%2Fcms%2Fs%2F0%2Ff26db3f6-3e22-11de-9a6c-00144feabdc0.html&_i_referer=)について、国連事務総長に先月提出された新しい報告書(http://www.un.org/News/dh/infocus/Sri_Lanka/POE_Report_Full.pdf)は、内戦の両当事者に責任があると言明し、真相究明と法の裁き(ジャスティスとアカウンタビリティ)に向けて、国際的メカニズムを設立するよう勧告している。
スリランカ北部のタミル・イーラム解放の虎(LTTE)支配地域から逃れてきた避難民=2009年5月、AP
スリランカでこの大殺戮が進行する中、国際社会の大部分はただ傍観するのみだった。それだけではない。内戦終了後も、内戦での残虐行為に対するスリランカ政府の捜査の懈怠(かいたい)に対しても、重い沈黙は変わっていない。
しかし、今回の国連の委員会の報告書の公表により、各国政府の静けさに、もはや言い訳の余地はなくなった。スリランカ政府に影響力の強い日本政府が、他国とともに、真のジャスティスのために国際的調査を求めることが非常に重要である。
今回発表された報告書は、世界的に著名な3名の専門家からなる国連の委員会により作成された。極めて入念かつ専門的な調査であり、スリランカ政府と「タミルの虎」に対する厳しい告発となっている。
この委員会は、「タミルの虎」がスリランカ政府からの攻撃を避けるため民間人を「人間の盾」として使い、自らの支配地域から避難する人々を撃ち、人口密集地に大砲を配置し、少年兵を使い、数々の自爆攻撃をしかけたと認定した。
一方で、スリランカ政府軍もまた、広範囲かつ無差別な民間人への砲撃、病院に対する組織的な攻撃などの陰惨な残虐行為を行った。さらに、戦闘地域に足止めされた市民の数を故意に少なく見積もり、人道援助の機会を奪った。しかも、戦場に独立して赴くことをスリランカ政府が認めないために、正確な死者数は今も誰にもわからないものの、この国連専門家の報告書は、「内戦の最終局面における民間人犠牲者のほとんどは、政府の砲撃により引き起こされた」と断定している。
―中略―
全文は
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011051700004.html
日本政府は、長きにわたるスリランカ政府のよき友だ。2002年、和平・復興プロセスでは共同議長を務め、スリランカ政府にとって世界最大の経済援助国でもある。しかし、過去、日本政府は、アカウンタビリティ(真相究明と法の裁き)の必要性について沈黙を続けてきた。しかも、軍事制圧が行われた09年5月には、国連人権高等弁務官の呼びかけにもかかわらず、大変遺憾なことに、スリランカの人権状況に関する国連人権理事会の特別会期の開催を支持しなかった。
そんな日本に昨年変化があった。10年7月、当時の岡田克也外務大臣がついに沈黙を破り、スリランカ政府に対し「国連と協力して……人権問題についてアカウンタビリティを果たす」よう呼びかけたのだ。外務省はこのときの方針を貫くべきだ。
先月の報告書の公表は、内戦で命を落とした多くの無辜(むこ)のスリランカ国民のために戦争責任を明らかにする、日本政府にとっての新たなチャンスだ。他国政府が態度を表明する中、外務省はスリランカ政府のプロパガンダキャンペーンに沿って沈黙を続けるべきではない。残酷な犯罪に対してはアカウンタビリティ(真相究明と法の裁き)が必要、という人権の原則をまもる他の国家とともに、日本政府もパン・ギムン国連事務総長を支援し、国連の専門家委員会の主たる勧告――つまり国際調査の必要性――を積極的に支持すべきである。
この「大殺戮」(http://www.ft.com/intl/cms/s/f26db3f6-3e22-11de-9a6c-00144feabdc0,Authorised=false.html?_i_location=http%3A%2F%2Fwww.ft.com%2Fcms%2Fs%2F0%2Ff26db3f6-3e22-11de-9a6c-00144feabdc0.html&_i_referer=)について、国連事務総長に先月提出された新しい報告書(http://www.un.org/News/dh/infocus/Sri_Lanka/POE_Report_Full.pdf)は、内戦の両当事者に責任があると言明し、真相究明と法の裁き(ジャスティスとアカウンタビリティ)に向けて、国際的メカニズムを設立するよう勧告している。
スリランカ北部のタミル・イーラム解放の虎(LTTE)支配地域から逃れてきた避難民=2009年5月、AP
スリランカでこの大殺戮が進行する中、国際社会の大部分はただ傍観するのみだった。それだけではない。内戦終了後も、内戦での残虐行為に対するスリランカ政府の捜査の懈怠(かいたい)に対しても、重い沈黙は変わっていない。
しかし、今回の国連の委員会の報告書の公表により、各国政府の静けさに、もはや言い訳の余地はなくなった。スリランカ政府に影響力の強い日本政府が、他国とともに、真のジャスティスのために国際的調査を求めることが非常に重要である。
今回発表された報告書は、世界的に著名な3名の専門家からなる国連の委員会により作成された。極めて入念かつ専門的な調査であり、スリランカ政府と「タミルの虎」に対する厳しい告発となっている。
この委員会は、「タミルの虎」がスリランカ政府からの攻撃を避けるため民間人を「人間の盾」として使い、自らの支配地域から避難する人々を撃ち、人口密集地に大砲を配置し、少年兵を使い、数々の自爆攻撃をしかけたと認定した。
一方で、スリランカ政府軍もまた、広範囲かつ無差別な民間人への砲撃、病院に対する組織的な攻撃などの陰惨な残虐行為を行った。さらに、戦闘地域に足止めされた市民の数を故意に少なく見積もり、人道援助の機会を奪った。しかも、戦場に独立して赴くことをスリランカ政府が認めないために、正確な死者数は今も誰にもわからないものの、この国連専門家の報告書は、「内戦の最終局面における民間人犠牲者のほとんどは、政府の砲撃により引き起こされた」と断定している。
―中略―
全文は
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011051700004.html
日本政府は、長きにわたるスリランカ政府のよき友だ。2002年、和平・復興プロセスでは共同議長を務め、スリランカ政府にとって世界最大の経済援助国でもある。しかし、過去、日本政府は、アカウンタビリティ(真相究明と法の裁き)の必要性について沈黙を続けてきた。しかも、軍事制圧が行われた09年5月には、国連人権高等弁務官の呼びかけにもかかわらず、大変遺憾なことに、スリランカの人権状況に関する国連人権理事会の特別会期の開催を支持しなかった。
そんな日本に昨年変化があった。10年7月、当時の岡田克也外務大臣がついに沈黙を破り、スリランカ政府に対し「国連と協力して……人権問題についてアカウンタビリティを果たす」よう呼びかけたのだ。外務省はこのときの方針を貫くべきだ。
先月の報告書の公表は、内戦で命を落とした多くの無辜(むこ)のスリランカ国民のために戦争責任を明らかにする、日本政府にとっての新たなチャンスだ。他国政府が態度を表明する中、外務省はスリランカ政府のプロパガンダキャンペーンに沿って沈黙を続けるべきではない。残酷な犯罪に対してはアカウンタビリティ(真相究明と法の裁き)が必要、という人権の原則をまもる他の国家とともに、日本政府もパン・ギムン国連事務総長を支援し、国連の専門家委員会の主たる勧告――つまり国際調査の必要性――を積極的に支持すべきである。