朝日新聞「私の視点」掲載:ゲンサー弁護士による北朝鮮CoI設立呼びかけ! ― 2013/02/01 08:31
しかし今、北朝鮮の人権問題に世界が注意を向ける希望の光が見えてきた。国連のナビ・ピレイ人権高等弁務官が北朝鮮国内の残虐な犯罪に対し、独立した国際調査委員会の設立を強く求めたのだ。
ピレイ弁務官は声明で、「鎖国政策の中、21世紀では考えられないほどの自国民虐待が、北朝鮮政府によって行われてきた」「長年にわたり北朝鮮が拉致した多くの韓国人と日本人の消息を明らかにする緊急の必要がある」と指摘した。北朝鮮への国際社会の姿勢を変えるかもしれない歴史的な一歩といえる。
拉致問題のほか、北朝鮮には強制収容所で苦しむ推計20万の人びとの問題もある。政府に不満を持つとみなされ、家族や親子三代で収容所に送られ、過酷な労働・拷問・性的暴力・重度の栄養失調に苦しむ。1日12~16時間の労働を強いられ、食べ物はわずかなトウモロコシ粥(がゆ)。ネズミや動物の死骸を食べて生き延びるほかない。
今月末、国連人権理事会の会期が始まるが、今回は重要な行動を起こせる稀有(けう)な機会である。同理事会は過去5年、北朝鮮決議を採択し続けたが効果はなかった。しかし今年は中国、ロシア、キューバという北朝鮮の後ろ盾となる国々が理事国を外れており、ピレイ弁務官が求める調査委員会を国連に設立する絶好の機会なのだ。国連の名のもと、独立・公平な専門家チームを設置すれば、国際社会による不作為は困難になる。これは極めて重要だ。
同理事会では日本と欧州連合(EU)が北朝鮮決議採択に向けて主導的な役割を担うのが慣例。めぐみさんら拉致被害者とその家族、北朝鮮国内で苦しむ人々の悲惨な状態を、世界は決して忘れていないと立ち上がる役割は、安倍首相の肩にかかっている。
安倍首相は先週、世界に先駆けて国際調査の支持を決める指導力をみせた。次に首相が取るべき行動は、徹底的な調査をする調査委員会の設立を支持するよう、EUを説得することだ。しかも、これから1週間のうちに。日本が行動を起こさずして、いったいどの国に期待できるだろうか?
(Jared Genser 米弁護士)