宇都宮大学 公開セミナー「アフリカの将来を問う―開発と人権確立をいかに両立させるか?」-エチオピアにおける開発と人権の矛盾を例に―(PART 2) ― 2011/07/23 04:14
そして、いよいよEHRCO(エチオピアを代表する人権NGO「エチオピア人権評議会」)元事務局長で人権活動家のヨセフ・ムルゲタさんの講義です。最初にご自分のキャリアについてお話をされました。「幼少期は、貧困の地で生まれ育ち、あらゆる形態の不公平や不当な行為に遭遇しました。生きる上での基本的な公共サービスを受けるにも常に権力に畏縮させられていました。そこで、法学部を目指し、弁護士になりました。最初は他の団体に所属していましたが、EHRCO(エチオピアを代表する人権NGO「エチオピア人権評議会」)について知り、そこに移りました。」
「エチオピアでは、新しい憲法が制定され、人権や民主主義も謳っているので、現政権以外の政党支持者にも政治への参加を容認するべきだと思われます。その中でEHRCOは、国民の人権侵害に関する苦情を受け入れている唯一の国内組織で、人権侵害について政府、メディア、国際社会に対して報告書を発表しています。エチオピアでは2005年に総選挙が行われて以来、その人権状況が悪化の一途をたどっており、選挙後のデモ活動が残虐な弾圧に合っています。EHRCOのメンバー数十人も関係したとして逮捕されています。政治的な弾圧は日常的に行われ、人権侵害に対する不処罰も横行。さらに、政府は新しい弾圧的な法律を制定。中でも新しいNGO法のためにEHRCOは存続の危機に直面しています。今こそ団結する時です。人権は人間にとって普遍的なものだからです。」

それから、ヒューマン・ライツ・ウォッチアフリカ局上級調査員のベンさんのスピーチです。「最初はタンザニアに英語を教えに行きました。そこの人々の生活様式にショックを受けたのと同時に、美しいタンザニアが大好きになりました。その後、ロンドン大学でスワヒリ語を勉強。そして国際関係を学ぶためにアメリカにも留学しました。その後、英国議会の外交委員会に勤務。タンザニア野党のアドバイザーとして選挙運動にも参加しました。そこで、目の当たりにしたのが、殺人、殴打、不当な拘禁などの人権侵害でした。その時にヒューマン・ライツ・ウォッチにレポートを送るなどの活動を開始。その後、調査員となり、ウガンダ・ナイジェリアなど5年程勤務し、『自由なき開発』という報告書を執筆しました。エチオピアは世界からの国際援助を、国民の統治のために政治的に利用しています。エチオピアでは、開発のアプローチとしては中国型アプロ―チをとっており、教育を受ける権利などはあっても、言論の自由の権利など基本的な市民権などないのです。市民権などがなければ国民は何の選択権もないことになり、この点は開発する際にはよく考慮されなければならないのです。」
(PART
3へ続く)