残念な日本の国連での投票行動 = 表現の自由を制限する「宗教に対する中傷禁止」決議2010/03/29 13:01

ヒューマンライツウオッチの土井香苗です。

さて、国連人権理事会(ジュネーブ)で議論されてきた 「宗教に対する中傷禁止」決議。

表現の自由の侵害、として世界中のNGOから批判されています。しかし、大きな論争の末、毎年国連で採択されているという歴史があります。

内容は、10日前に、「宗教に対する中傷禁止vs表現の自由!? 」と題してこのブログでも紹介したところでした。(http://hrw.asablo.jp/blog/2010/03/16/4950082

しかし、世界中のNGOが一緒になって取り組んでいる成果もあり、この決議に反対する国もだんだん増えてきています。

日本にも、今年こそは、この「宗教に対する中傷禁止」決議に反対してほしい、とアジアを含む世界中のたくさんの人権NGOが求めていました。

そして、先週木曜日(3月35日)、国連 人権理事会にて投票。
結果は:
日本は今年も反対せずに棄権のまま
でした。がっかり

日本の投票行動は今年も残念でしたが、ザンビアやアルゼンチンのような国々の建設的なリーダーシップによって、今年は、この「宗教に対する中傷」決議は、これまでで最小の票差での採択となりました。
(賛成20カ国、反対17カ国、棄権8カ国)僅差です。
(ちなみに、去年は、賛成23、反対11、棄権13)

世界中のNGOは、表現の自由を制限し、宗教に対する中傷や批判を禁止することが、逆に、宗教に対する差別を増幅すると心配しています。今も、多くの女性やマイノリティが、宗教の名の下に差別されている実態があり、こうしたことを助長してしまいます。

この決議には、欧米諸国が反対票を投じているのはもちろん、昨年までは棄権だったザンビアやアルゼンチンが今年は反対票を投じました。韓国も、最近反対に移りました。

今年も、この決議に反対しなかった日本。
残念です。その思惑には何があるのでしょうか・・・

(いろいろ裏の動きについても聞きましたが)世界のひとびとの人権を守るのが目的の「人権理事会」なのですから、政治や取引(バーター)ではなく、人権保護のためになるのかならないのかだけをメルクマールにして投票行動を決めてほしいと思います。それが成熟した人権尊重社会の証のはずです。

しかも、日本は、以前はこの決議に反対していたのに、その後、棄権にかえたという歴史があります。多くのNGOのなかに、そんな日本に対するshameful! という非難と落胆の声があがっているとのこと。

せっかく北朝鮮の人権決議をリードしている日本なのに、このように行動がつじつまがあわないようでは、その信頼性も揺らいでしまいます。

本当に残念。今後も、国連総会や人権理事会での日本の投票行動に注目していきます。