勇気ある女性たち : 米国国務省 「勇気ある国際女性賞」受賞者にお会いして―HRWニューヨーク本部インターン日記2010/03/27 10:20

  こんにちは、NYオフィスのインターン奥村です。先日こちらには、「勇気ある国際女性賞」(International Women of Courage Awards)の今年度受賞者がおいでになり、各国の人権状況や皆さんの活動実績、HRWとの協力関係についてお話くださいました。この賞は、世界各国で社会正義と人権のために顕著な活動を行った女性リーダーの勇気を讃え、毎年米国務省が授与しているものです。


 受賞者の仲には、ケニアにおける女性のための権利団体Center for Rights Education and Awareness (CREAW)の創設者であり、代表でもあるアン・ヌジョグ(Ann Njogu)さんなど、ヒューマン・ライツ・ウォッチとパートナーを組んできた方もおられます。

 アンさんに加えて、今年の受賞者のうち、次のような方がHRWにおいでになりました。

Ms. Jesina Mukiko (ジンバブエ)
 ジンバブエのNGO「平和プロジェクト」常任理事。同NGOは、女性に対する暴力や政府による偏った食糧配分などの人権侵害について報告してきました。2008年12月、彼女は国家保安隊から連れ去られ、隣の国ボツワナからジンバブエへテロリストが侵入するのを幇助したという自白を、拷問の末強制的にさせられたそうです。その結果、翌年3月に無実が証明されるまで、投獄されることとなりました。

Dr. Lee Ae-ran (韓国)
 祖父母がキリスト教信者であったことを理由に、北朝鮮出身だった彼女は11歳のとき、家族ともども「悪分子」として強制労働収容所に送られました。そこで飢えと虐待に耐えながら8年間を過ごした後、ようやく勉強と仕事の機会を得たのものの、1997年に親戚の密告により再度投獄される危険に遭っています。そしてやむなくほかの家族を残し、当時生後4ヶ月だった息子さんとともに韓国へ亡命。北朝鮮からの亡命者として初めて、博士号取得者となり、2005年には北朝鮮出身の学生に対する奨学金プログラム、2009年には北朝鮮からの女性亡命者を支援するNGOを設立しました。

Ms. Colonel Shafiqa Quraishi (アフガニスタン)
アフガニスタン内務省でジェンダー・人間・子どもの人権局長として、国家雇用機会均等戦略を立案し、同省における女性職員を5000人までに増員することと、女性職員に対する福利厚生を向上させることを目指してきました。また彼女は、アフガン国家警察の元警察官でもあり、長年制限されてきた女性警察官の昇進を改善し、女性が警察官として重要な役割を果たせるという認識を普及するのに寄与してきました。

Ms. Shokuria Assil (アフガニスタン)
 バイラク地方の地方評議会における女性メンバー4人のうちの一人。彼女は働く女性のためのネットワークグループの創設、女性のための運転教習所設置を始め、女子の高等教育への就学率向上などにも努めてきました。誘拐や殺害の脅しを受け、身の安全のために仕事を休むよう警察や保安隊からから言われたこともありました。それにもかかわらず、停職処分を受けた女性教師の無実を証明したり、性的虐待を受けたことが原因で、家族に勘当された少女と、その家族との和解を促するなどの精力的な取り組みを続けてきました。

Ms. Jensila Majeed (スリランカ)
 約20年間国内避難民として生活した後、政府によって無視されてきたイスラム教徒の国内避難民やタミル人の国内避難民の保護やコミュニティーの再生、女性への支援に取り組んできました。彼女が理事をしている信託基金はこれまでに、女性の権利、平和構築、失業対策、青少年活動などの幅広い事業を行なっています。

Ms Solange (Sonia) Pierre (ドミニカ)
 サトウキビ畑で働くハイチ系移民労働者グループの代表者をしていたため、13歳で逮捕されてしまった彼女は、それ以来、ドミニカでのハイチ人に対する差別と闘う活動をしてきました。そしてMUDHA(Movement of Dominican-Haiti Women)を発足し、同団体の代表として、主に、ドミニカでのハイチ系移民とその子どもたちの国籍や市民権問題に取り組んできました。

 みなさんのさらに詳しいプロフィールはこちら(英語)
 
 このように、受賞者の方に共通するのは、身の危険を冒しても、逆境を乗り越えて、女性やマイノリティーのために貢献されてきたという点であり、その「勇気」が今回の受賞に結びついたのだと思われます。

 彼女たちの地元での活動とHRWとの関係性について、ドミニカのJesicaさんが印象的なコメントを残されました。各国の国レベル、あるいはコミュニティレベルで活動していくうち、それに反対する人びとから抵抗さたり、妨害されたりすることもしばしばある。そして侵害してくる相手が政府の場合も多い。そんな中、HRWのような国際的に注目されている団体が、常に彼らをモニターし、警鐘を鳴らし続けることこそが、政府が彼女たちの活動を侵害するのに歯止めを掛けるのに役立つと。HRWが行なうフィールド調査とその報告が地元の活動家を間接的に後押ししているのいうのはすばらしいことだと思います。

 もちろんその先のHRWの課題とは、政府等への提言をいかに実行に結びていくかだと思いますが、それにもこのような地元の活動家との連携は、私たちの活動の根幹部分で欠くことはできないものだと思いました。

また、こうした勇気ある女性たちを米国の国務省が表彰していることもすばらしいと思いました。HRWはもちろんですが、米国が表彰することでこうした女性たちの身の安全は高まります。日本の外務省にも、いつのひか、on the ground =現場 で勇気をもってがんばっている人権活動家たちを表彰してほしいと思います。

そして、そのためには、まずは、そうした人たちとコンタクトをとることが必要です。よく、現地のNGOから、「日本政府からは全くコンタクトがない」といわれます。まずは、社会を変革しようとたちあがった現地の勇気ある人びととコンタクトをとり、現地のNGOと連携を深めることが、日本の外交にとって必要ではないでしょうか。