ニュースの深層:「薬物使用は『悪』なのか?」2011/03/07 13:19

みなさま、こんにちは。インターンの湯村です。香苗さんが水曜日を担当している「ニュースの深層」。3月2日の放送は、薬物問題をテーマに、慶応義塾大学教授の樽井正義さんをお迎えしました。樽井さんは、哲学・倫理学が専門の先生で、エイズ&ソサエティ研究会議の副代表でもあります。
         左から アシスタントの前田真里さん、香苗さん、樽井さん

薬物と人権。一見分かりにくい2つの問題の関係を、55分間のライブ討論でお届けしました。

日本では、薬物の生涯経験率が2~3%。それに比べ、ヨーロッパでは20~30%、アメリカでは約40%。薬物問題が深刻な海外で、今注目されている制度が「ハームリダクション」(薬物使用に伴う危害を少なくする)です。

薬物使用の重大な側面は、その死亡者数です。死亡者の多くは、過剰摂取や注射器の使い回しによるAIDs感染なのです。この対策として、「ハームリダクション」を20年前に導入した国がスイスです。

具体的には、注射器の交換、情報と相談の提供、経口薬物への薬物代替などを行いました。注射器の使い回しを防ぐために、無料で新しい注射器と交換。薬物使用者の孤立を避け、スタッフと話せるようにし、情報や相談を提供。注射式のヘロインからシロップ状で口から摂取するメサドンに代えることによって、AIDsを防ぐことができるようになったのです。

薬物使用を促進しているのではないかという批判がされるものの、スイスの他にも台湾などでも「ハームリダクション」の成功がみられています。日本は薬物使用が他国に比べて低いのですが、「ハームリダクション」を国際的な場で批判しています。今月開催される国連麻薬会議での日本の言動が注目されます。

2万人が薬物使用で刑務所に入れられているものの、健康問題として治療を受けているのがその100分の1である2百人しかいない日本。薬物問題には、「薬物=犯罪」という側面以外にも、「薬物=健康問題、人権問題」という側面があるということを気付かせてくれる回でした。

再放送は、こちらからどうぞ。
来週もどうぞご覧下さい!!


         放送直前の様子